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◇はばたき血友病情報(医療情報)[ 血友病A遺伝子治療で新たな情報、HIV、HCV感染、インヒビター発現血友病患者などへの遺伝子治療可能性を追求した開発報告 ネイチャー・コミニケーション誌より ]

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  • 2014.9. 1

ネイチャー・コミニケーション誌から、

HIVや肝炎ウイルスに感染している血友病A患者、ウイルスベクターに対して免疫反応を示す患者、インヒビター発現患者への遺伝子治療可能の布石となる血小板での第VIII因子を発現する血友病Aイヌモデルを用いた遺伝子治療の開発

〇血友病の遺伝子治療は、ウイルスベクター (アデノウイルスベクター)などを用いて臨床応用が日進月歩で進んでいます。残念ながら、本治療はHIVや肝炎ウイルスに感染している患者や、インヒビターを発現している患者や、ウイルスベクターの外殻に対して免疫反応を示す患者(本論文によると血友病患者の30%に該当すると記載されています。)遺伝子治療の対象から除外されています。

筆者らはヒトの第VIII因子をコードする遺伝子を造血幹細胞への自己移植が、血友病患者の治療に有効であると仮定してきました。活性化血小板は傷の部位にくっつくことで、生物学的に活性化タンパク質を分泌します。ケガなどにより血管が損傷し血小板内の第VIII因子が分泌されることが血友病Aの止血に際して理想的な方法であると考えて本研究を開始しました。

メモ:
血小板は循環血液中に存在する無核の直径2-4 μm の細胞であり,骨髄中で造血幹細胞か
ら分化した巨核球の細胞質断片が放出されることで産生されます.生体は,出血に伴う血管内細胞傷害に鋭敏に反応し局所での止血反応を進行させるが,血小板はその初期段階の一次止血栓の形成に重要です。

タイトル:

Platelet-targeted gene therapy with human factor VIII establishes haemostasis in dogs with haemophilia A

血小板を標的としたヒト第VIII因子の遺伝子治療が血友病Aイヌで確立

出典:Nat Commun. 2013;4:2773. doi: 10.1038/ncomms3773.
著者Du LM1, Nurden P, Nurden AT, Nichols TC, Bellinger DA, Jensen ES, Haberichter SL, Merricks E, Raymer RA, Fang J, Koukouritaki SB, Jacobi PM, Hawkins TB, Cornetta K, Shi Q, Wilcox DA.
要旨 出血性疾患患者における過度の出血を制御する治療を改善することは必須である。活性化血小板は、血小板外傷に最初に反応し介在する。私たちは、血小板内の第VIII因子の凝固と貯蔵が血友病Aの止血を維持するために部分的に止血をおこなうのでは仮定している。造血幹細胞遺伝子治療により、移植後2年半もの間、血友病Aイヌの重症出血症状の予防を可能にしている。私たちは、活性化血小板由来のFVIIIの貯蔵と放出を可能にするヒト第VIII因子の血小板特異的な発現の誘導をおこなうITGA2B遺伝子プロモーターをコードするレンチウイルスベクターに基づく臨床的に関連性のある治療をおこなっている。

訳注:ITGA2B:インテグリンαIIb ITGA2B遺伝子プロモーターは巨核球特異的な遺伝子発現を誘導する。

第VIII因子とα―顆粒により効果的にFVIIIを運ぶフォン・ビルブランド因子 プロペプチドーD2ドメインを融合させたハイブリッド分子を動物に移植する。血小板由来のFVIIIに対するインヒビター抗体がない場合は、このアプローチはFVIII補充療法をできない患者では利点がある。従って、血小板FVIIIにより、血友病A患者に対して効果的な長期の出血コントロールが可能となる。
本論文のデイスカッションの要約
第FVIII因子を組み込んでいる新世代のアデノウイルスベクター(AAV)は、静脈による肝臓でのヒトFVIIIの発現を標的することによって改善しているように思われます。しかし、肝臓をターゲットにしているAAV臨床試験では、汚染された血液製剤による肝炎やHIVに感染した血友病患者、および血漿FVIIIに対するインヒビター抗体やAAVの外殻に対して過去に免疫応答を示した患者を除外する予定です。従って、FVIIIのレンチウイルス遺伝子導入のターゲットとして造血幹細胞を用いて、生体外でのアプローチが肝臓をターゲットにした遺伝子導入手法で除外されている原因疾患をもつ30%の患者にとって朗報であると思われます。

何故、血小板に遺伝子導入した第VIII因子に対しては、インヒビターは発現しないのか?
この質問に対しては 以下の論文のデイスカッションに推論が記載されていました。
Lentivirus-mediated platelet-derived factor VIII gene therapy in murine haemophilia A Journal of Thrombosis and Haemostasis Volume 5, Issue 2, pages 352-361, February 2007 Q. SHIらの論文でも第VIII因子に対するインヒビターが発現しておらず、デイスカッションで筆者らは、血小板に遺伝子導入された第VIII因子はVWF(フォン・ビルブレンド因子)とともに貯蔵されており、出血のさいに放出されており、血小板で隔離されており、止血時に血小板の活性化により放出され免疫系に暴露される時間が短いため、インヒビターの出現頻度が低下していためではと推論しています。

本論文で特色である血小板に第VIII因子を発現させる遺伝子治療は、HIVや肝炎ウイルスに感染している血友病A患者においても適応可能となります。本論文はまだイヌの段階ですが、血小板に遺伝子治療をすることで試験後、血友病Aイヌの止血状態が2年半もの間改善がみられており本研究の実用化が期待されます。

( M.E )

参照図

f2_20140901.jpg

イヌ血小板α顆粒:緑: フイブリーノーゲン 血小板α顆粒の特異的パターン マーカー点状に分布、 赤:FVIII:第VIII因子Bドメイン欠損タンパク質 黄色:共局在を確認

第VIII因子Bドメイン欠損タンパク質も同様に点状に分布していることが見て取れる。

f4_20140901.jpg活性化血小板は第VIII因子を分泌する。血小板活性アゴニスト:ADP、エピネフイリン、イヌPAR1,3,4 ●アゴ二スト有り、○アゴ二ストなし

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