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〚はばたき血友病情報「NEJM誌掲載情報から 重症血友病患者Aにおける第Ⅷ因子製剤とインヒビター発現の観点」〛

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  • 2013.6. 5

 

 『 重症血友病 Aにおける第 VIII 因子製剤とインヒビター発現 』

 (Factor VIII products and inhibitor development in severe
   hemophilia A.)

 著者:Gouw SC et al.

 出典:N Engl J Med. 2013 Jan 17;368(3):231-9.
     doi: 10.1056/NEJMoa1208024.

 要旨は南江堂の要旨翻訳したものを引用しています。

 背景:治療歴のない重症血友病 A の小児では、投与された第 VIII 因子

  製剤の種類や製剤間の切替えが、臨床的に意義のある阻害抗体の発現

 (インヒビター発現)に関連するかどうかは明らかではない。

 方法:阻害抗体は 574 例中 177 例で発現しており(累積発現率 32.4%)、

  116 例では最高力価が 5 ベセスダ単位/mL 以上と定義した高力価の阻害

  抗体が認められた(累積発現率 22.4%)。

   血漿由来製剤は,遺伝子組換え型製剤に伴うリスクと同程度のインヒビ

  ター発現リスクをもたらした(遺伝子組換え型製剤に対する補正ハザード

  比 0.96,95%信頼区間 [CI] 0.62~1.49).

   第三世代の全長遺伝子組換え型製剤(ヒト第 VIII 因子の相補的 DNA

  全長配列に由来)と比較して,第二世代の全長組換え型製剤は,インヒビ

  ター発現の高いリスクと関連していた(補正ハザード比 1.60,95% CI

  1.08~2.37)。

   製剤中のフォン・ヴィレブランド因子含有量や製剤間の切替えは、イン

  ヒビター発現のリスクには関連していなかった。


 結果:阻害抗体は 574 例中 177 例で発現しており(累積発現率 32.4%),

  116 例では最高力価が 5 ベセスダ単位/mL 以上と定義した高力価の阻害

  抗体が認められた(累積発現率 22.4%).

   血漿由来製剤は,遺伝子組換え型製剤に伴うリスクと同程度のインヒビ

  ター発現リスクをもたらした(遺伝子組換え型製剤に対する補正ハザード

  比 0.96,95%信頼区間 [CI] 0.62~1.49).

   第三世代の全長遺伝子組換え型製剤(ヒト第 VIII 因子の相補的 DNA

  全長配列に由来)と比較して,第二世代の全長組換え型製剤は,インヒビ

  ター発現の高いリスクと関連していた(補正ハザード比 1.60,95% CI

   1.08~2.37)。

   製剤中のフォン・ヴィレブランド因子含有量や製剤間の切替えは,イン

  ヒビター発現のリスクには関連していなかった。


 結論:遺伝子組換え型第 VIII 因子製剤と血漿由来の第 VIII 因子製剤は,

  同程度のインヒビター発現リスクをもたらし、製剤中のフォン・ヴィレブ

  ランド因子含有量や製剤間の切替えは,インヒビター発現のリスクには関

  連していなかった。

   第二世代の全長遺伝子組換え型製剤は,第三世代製剤と比較して高いリ

  スクと関連していた。(Bayer Healthcare 社,Baxter BioScience 社の研

  究助成を受けた。)


 論文の骨子.

  第2世代型組み換え製剤の全長型(訳注:第VIII因子タンパク質の全ての部分

 を含む、欠損部分はなし)は、第3世代と比較するとインヒビター発現のリスク

 が高い。

 

 * 全長タイプを用いている第2世代型組み換え型第VIII因子 コグネートFS

 (BHK細胞、全長型)バイエル薬品株式会社、ヘリキセート/ヘリキセートFS

 (BHK細胞、全長型)CSL ベーリング株式会社


 本論文の序論および考察の翻訳

  組み換え型第VIII因子製剤は、血漿由来血液製剤より免疫原性が高いことが

 示唆されています。しかしながら、多くの研究と系統的レビューでは、どちら

 の製剤がインヒビターを発現しやすいかということに関しては正反対の内容の

 論文が報告されています。

  どうして論文間で差異があるのかということに関しては、これらの研究では、

 登録者が少なく、研究対象集団が異質であること、第VIII因子製剤が多岐に及ん

 でいること、研究間の比較が、研究デザインが異質であるため難しいことが挙げ

 られます。

  最小限の治療をおこない、インヒビター発現の危険性を有する患者は、インヒ

 ビター発現の危険性が過小評価されています。

  さらに、製剤が市販された後の前向き研究によると、幼少期に出血し、危険性

 の高い患児のインヒビター発症の危険性は過小評価されています。

  さらに、過剰な評価をした小規模試験では、明白な結果を示していない患者よ

 りは論文になるという可能性があります。

  第VIII因子製剤の免疫原性を比較した無作為に割り付けた治験は、まだ終了し

 ていません。インヒビター発現に対して組み換え型製剤と血漿由来製剤の異なる

 危険性は、各患者へどの種類の製剤を投与するかの決定や入手可能な望ましい製

 剤に影響を与えるでしょう。

  従って、組み換え型や血漿由来製剤と関連するインヒビター発現の危険性の知

 識は、血友病患者と総じて血友病患者にとって重要です。

  我々は、第VIII因子製剤の種類や、製剤間の切り替えが、過去に未治療の重症

 血友病患者では、インヒビター発現と関連性があるかどうかの評価をしました。

  結論としては、重症血友病患児の組み換え型第VIII因子製剤の使用は、インヒ

 ビター発現の危険性に有意な影響を与えることはありませんでした。血漿製剤、

 フォンビル・ブレンド因子を含んだ製剤、インヒビター発現の危険性を伴う第3

 世代切り替えによる有意な危険性は見られませんでした。

  予期もしない成果としては、第VIII因子全長を用いている第2世代の組み換え

 型製剤は、第3世代のそれと比較するとインヒビター発症の危険性が高いという

 ことです。


 表1

 市販化されている組み換え型第VIII因子製剤

 ()内は 遺伝子導入に用いた細胞株、第VIII遺伝子 全長型、Bドメイン欠損型

 を表記)

NEJM1.png

 

  
 

 

  

 NEJM2.png

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

過去に未治療の重症血友病A患児574例、組み換え型および全血漿由来製剤(左)、

  参考グループは組み替え型製剤、特殊製剤間の比較(右)。

  第1世代の組み換え型製剤は、リコンビネートで評価した。Iバー95%信頼区間 [CI]

※本コホートでは、574例、2000~2010年に生誕した重症血友病患者の患児を対象と

 して、インヒビター発現の危険性をもたらす組み換え型第VIII因子製剤は、血漿由来

 製剤を起因とするインヒビター発症の危険性と関係ありません。

  第2世代の全長の組み換え型製剤は、第3世代の全長の製剤よりインヒビター発症

 の危険性が高くなりました。

  組み換え型製剤あるいは、第VIII因子製剤の最新の製剤への切り替えにより、イン

 ヒビター発現の危険性を高くなることはありませんでした。

  他の研究では、コホートで組み換え型製剤と血漿由来製剤も使用を直接比較しました。

 最初の治療による製剤使用による交絡因子の可能性に関しては、表1にまとめました。

 インヒビター発症の危険性のある小児は、第3世代の全長の第VIII因子製剤より頻繁に

 第2世代の全長の第VIII因子を治療していませんでした。

  従って、交絡因子の可能性は排除します。

  特定の血液製剤により、センター間のインヒビター頻度や方法が異なっている場合で

 得られた知見は、情報バイアスにより影響を受けている可能性があります。しかし、イ

 ンヒビター発現の高い抗体価の集積的な頻度は、インヒビター抗体は臨床的に常時検出

 できますので、センターの臨床検査の未熟さによるインヒビター・スクリーニング影響

 を受けているでしょう。

  相対的に小さな母集団で血漿製剤や、あらゆる種類の血漿製剤による治療を投与した

 ことで、様々な血漿製剤間のインヒビター出現の危険性の差異を検出することができな

 い可能性があります。

  いくつかの研究報告では、血漿製剤第VIII因子製剤は、とりわけ、フォンビル・ブレ

 ンド因子をかなり多く含むものは免疫原性が低いとされています。しかし、いくつかの

 体系的な調査では、この結果が入っていません。

  我々の結果は、同様に設定された研究、重症血友病Aの中和抗体の提携調査CANAL と

 一致しています。

  そこでは、インヒビター出現の危険性が、組み換え製剤より血漿製剤は明らかに低く

 なっていないというものです。

  予期もしないこととしては、インヒビター出現が第2世代全長の組み換え型製剤を使

 用していたほうが、第3世代の全長を使用していたより60%高くなるというものでし

 た。この関連性はバイアスをうけた成果と関連性がある可能性があります。

  交絡因子、選択バイアス、あるいは情報バイアス)、偶然の発見、因果効果です。

  我々は、可能性の高い多くの交絡因子を適応することによって、バイアスを説明して

 きました。

  最初の治療で使用した製剤による可能性のある交絡因子をまとめました。(表1)

 インヒビター出現の危険性が高い小児は、第3世代全長型の製剤より、第2世代全長型

 を服用していません。したがって、交絡因子では、この関連性は説明できません。

  我々は、継続的に経過観察している全患者をいれることによって選択バイアスを除外

 し、インヒビター出現が高い可能性のある患者を患者センターに照会して除外しました。

  さらに、選択バイアスがないことを裏付けるために、安全性や有効性がない患者の間

 の選択分析を施行しました。

  このような治験に参加していない患者は、初期出血がありませんのでインヒビター出

 現の危険性を軽減することになります。

  第2世代の全長型の組み換え型によるインヒビター出現は、第3世代のそれと比較す

 ると高い傾向にあります。

  さらに、我々は、中和抗体価が高いことと関連性があることを発見しました。従って、

 選択バイアスと情報バイアスは、第3世代の組み換え製剤と比較すると、第2世代の全

 長型組み換え型によるインヒビター発現の危険性が高いことが明らかになりました。

  組み換え型間両者の間の違いは、偶然によるものかもしれません。しかしながら、我

 々の有効性評価の正確性を考えると、偶然という要素はなさそうです。本研究で裏付け

 られていない研究に関する限り、その可能性を排除します。バイアスはなさそうですし、

 偶然の成果というものも可能性としては低そうです。

  第2世代を治療してきた患者のインヒビター発現の危険性が高いことは、明白に明ら

 かです。他の研究報告では、体系的な評価、コグネート・バイエル研究グループの報告

 を含め、あらゆる組み換え型第VIII因子製剤のインヒビター発現の危険性に違いはない

 としています。

  この登録データの中で、インヒビター発現の頻度は過小評価されています。

  過去に数日間、輸注経験があることや、まだインヒビター発現の危険性があるサブ

 グループの患者の経過観察が短いことが挙げられます。追加研究では、このような結果

 についても証明することや、生物学的説明を加えることが必要です。

  多くの可能性のある交絡因子の関連性を当てはめること、全長型第2世代によるイン

 ヒビター発症の危険性で見られた増加が組み換え型第VIII因子間の免疫原性が異なるか

 という直接的な生物学的な説明をすることはできません。

  これらの得られた研究成果を評価及び、生物学的な説明を判別することが新たな研究

 の課題となっています。

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