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◇はばたき血友病情報(研究・開発) 「日本における先天性血友病患者のインヒビター発現頻度に影響を与える要因分析」

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  • 2011.10.14

 タイトル:日本における先天性血友病患者のインヒビター発現頻度に影響を与える要因分析
         ( An analysis of factors affecting the incidence of inhibitor formation
                                 in patients with congenital haemophilia in Japan. )

 著者:Shirahata A, Fukutake K, Higasa S, Mimaya J, Oka T, Shima M, Takamatsu J,
    Taki M, Taneichi M, Yoshioka A;
    STUDY GROUP ON FACTORS INVOLVED IN FORMATION OF INHIBITORS TO FACTOR VIII
    AND IX PREPARATIONS.

 出典:「 Haemophilia. 2011 Sep;17(5):771-776. 」

 要旨:欧州や北アメリカで実施されている試験は、人種要因などさまざま要因が血友病患者の

     インヒビター発現に影響を及ぼしていることを示している。本試験では、日本人血友病

     患者AとBに影響を及ぼしている要因分析が実施された。分析データは、モノクロ―ナル

     抗体精製第VIII因子製剤が商品化された1988年以降、出生した血友病患者AおよびBから

     後ろ向きに収集された。(血友病A患者153例、血友病B患者31例)

    血友病Bの症例数は、背景変動では、インヒビター発現群と非インヒビター発現群の間

   に有意な違いは示さなかった。一方で、血友病患者に関して、単変量解析でインヒビター

     発現の危険要因として、重症血友病患者と明確なインヒビター発現家族歴を特定した。凝

     固因子製剤使用の分析では、血漿製剤投与群(29.7%)と組み換え型血液製剤投与群(25.0%)

     との間に有意差はなかった。

       背景変動を比較した場合、血漿製剤投与群では、年齢が高かった。しかし、他の背景変

     動では両群では差異はなかった。こうした結果は、日本人血友病患者では、治療用で投与

     された凝固因子製剤の種類はインヒビター発現頻度に影響を及ぼさなかったことを示唆し

     ている。

 ※コメント 本試験は、北九州総合病院、東京医科大学病院、静岡県立こども病院、札幌徳洲

    会病院、奈良県立医科大学付属病院、名古屋大学病院および国立感染症研究所から収集

    した血友病患者から収集したデータをもとに日本人における血友病患者のインヒビター

    発現要因について解析をおこなったものです。

     これまで、白人に関していえば、インヒビター発現が血漿由来の濃縮製剤投与群のほ

    うが、組み換え型と比べると少ないというフランスの報告と、一方で両群では、有意差

    はないとするCANAL study(重症血友病患者における中和抗体の協調作用:フォンヴィレ

    ブランド因子を含む血液製剤と組み換え型製剤の比較)や英国での報告があります。
 
     また、黒人やラテン系の血友病患者のほうが、インヒビター発現頻度が高いことが知

    られています。

     本試験は、後方視的であり凝固因子製剤の最初の投与から2年以上経過した患者を対象

    として、1988年(モノクローナル抗体精製による凝固因子濃縮製剤が市販化された以後

    に誕生した大規模の血友病患者を対象として調査したところ、前述したCANAL studyと一

    致しており、血漿由来凝固因子投与群と組み換え型投与群の比較では有意差は見られま

    せんでした。

     さらに、インヒビター発現の家族歴を有する患者は、インヒビター発現率が高いよう

    にみえるとし、これは遺伝変異を反映する可能性があるとしています。

     CANAL studyでは、早期の発症時での集中投与がインヒビター発現に密接に関係がある

    と報告していたため、本論文の著者らは、インヒビター発現以前の過去2年以内に頭蓋内

    出血、他の重症出血、侵襲的外科手術での集中投与をおこなった患者を対象としてインヒ

    ビター発現を調べました。頭蓋内出血の治療で、インヒビター発現症例が約2倍多いと報

    告されていましたが、統計的に有意ではありませんでした。

     さらにインヒビター発現頻度は、発症時療法群と予防投与群間で有意差はありませんで

    した。↓下記の参照図をご覧ください。

        20111014.jpg
     本論文では、1988年にモノクローナル抗体精製が市販化された以降に誕生した日本人血

    友病患者の若い世代を対象として大規模に調査し、血漿由来凝固因子製剤投与群と組み換

    え型凝固因子製剤投与群の間でインヒビター発現では有意差はないと報告している論文で

    す。このような結果が日本人を対象として得られたのは大変意義深いものだと思います。

     ただ、血液製剤を投与してから何十年も経過している患者や高齢血友病患者の場合にお

    いても血漿由来と組み換え型では、同様に有意差はないのかという点が中年および年配の

    血友病患者にとって、知りたいところではないでしょうか。

     また、新たな製法で作られてくる組み換え型凝固遺伝子製剤は、旧来の血漿由来の製剤

    と有意差がないといのはいかにも淋しくなります。副作用としてのインヒビター発生はず

    っと少ないとか、なくなりますという製剤を目指してほしいと思います・


  

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