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はばたき血友病情報(研究・開発)[血友病Bの患者に遺伝子治療 実用化に向かう朗報] NEJM誌から

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  • 2011.12.31


 【 血友病B患者へ、治癒をめざした遺伝子治療、具体化に向けクリスマスプレゼント 】

  血友病Bの画期的な遺伝子治療の研究成果が世界的に権威のある医学雑誌「New

 England Journal of Medicine」誌に発表されました。

 研究内容の論文内容は New England Journal of Medicine の南江堂の和訳、一般

 むけあるいは本研究の評価や背景などは New York Times 誌の電子版および世界

 血友病連盟(WFH)のコメントをご参照ください。

  今回の成果の特徴は、第IX因子導入から第IX因子発現の持続期間が長いことが挙

 げられます。患者によっては(臨床試験に参加した6名のうち4名ですが)製剤を全

 く必要としなくなった方や遺伝子治療の効果が最長約 20カ月間持続した方もいます。

 残りの2名も製剤投与の回数が減ったなど、臨床治験に参加した全ての血友病患者が

 この遺伝子治療により恩恵を得ています。

  使用しているアデノ随伴ウイルスは肝細胞に特異的に感染するため効率性が高い

 点や無作為に染色体に組み込まれることはないため、過去に X連鎖重症複合免疫不

 全症(X-SCID)に対して、レトロウイルスを用いた造血幹細胞遺伝子治療の際、白

 血病を誘発した有害事象を排除できるとしています。

  副作用としては肝機能数値が悪化していることや、マウスの実験で肝癌を誘発し

 たというデータがでているため、今後の更なるモニタリングが必要であると記載し

 てあります。

  今後の課題としては、導入遺伝子の至適用量、感染した肝細胞は永続的に分裂で

 きないため、遺伝子導入の効果が減弱するため期間が限られていることや、次回の

 遺伝子導入の際の患者の免疫応答はどうなのかといった点です。


  WFH(世界血友病連盟)のマーク・スキナー会長も今回のことを絶賛しており、

 血友病治療のみのらず遺伝子治療の分野にとっても特筆すべき成果です。

  血友病の遺伝子治療は以前から研究がすすんでいましたが、現在に至るまでどれ

 もが実用化にいたっていません。今回の研究報告を礎に「治療から根本的治癒へ」

 のきっかけとなれば幸いです。


 New England Journal of Medicineの南江堂の和訳
 ↓
 http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/xf2hm.htm

 DECEMBER 22, 2011

 タイトル:『血友病 B に対するアデノウイルス随伴ウイルスベクターを介した

                                 遺伝子導入』

 (Adenovirus-Associated Virus Vector-Mediated Gene Transfer in Hemophilia B)

 著 者 : A.C. Nathwani and others

 出 典 :(N Engl J Med 2011; 365 : 2357 - 65.)

        World Federation of Hemophilia (世界血友病連盟ホームページから)


 【血友病Bの遺伝子治療臨床試験は有望な結果を示す】

 2011年12月

  血友病 Bの遺伝子治療で最初の明確な成果が New England Journal of Medicine の

 オンラインの土曜日版で発表されました。重症血友病 B患者が正常第 IX因子の導入に

 応答しました。低用量の導入で治療をうけた最初の患者は16カ月間超も2%濃度を持続

 する一方で、一番高用量の治療を受けている患者は20週間、8~12%と様々な濃度を維

 持しました。全患者は第 IX因子遺伝子治療から恩恵を受けています。

  研究者によると、「この研究は、長期におよぶ静脈輸注射をやめることに向けての重

 要な段階を証明しています」。導入された第IX因子遺伝子の持続的な治療発現がヒトで

 獲得されたことを示しています。この遺伝子治療のアプロ―チは、一時的な肝機能不全

 の併発の危険性があったとしても、重症出血表現系をこの疾患の軽症へと変え、完全に

 回復する可能性を有しています。

  世界血友病連盟は、本臨床治験を含む初期の支援者となっています。「この目標を達

 成するためにこの領域に従事している臨床医や研究者を応援しています」。我々は臨床

 試験に参加している研究者や患者に本当に感謝しています」。とWFHの会長のマーク・

 スキナー会長は述べています。


 ニューヨーク・タイムズ電子版より和訳

 December 10,2011

 【血液疾患治療、画期的な遺伝子治療】

 ニコラス・ウェイド記者

  英国の医学研究者達は、欠如している遺伝子の正常型を患者に遺伝子導入することに

 よって、患者 6名を治療するのに成功しました。問題がある遺伝子治療の領域で画期的

 な成果です。

  血友病Bは、ビクトリア女王によって伝えられ、ヨーロッパのほとんどの王家が罹患

 しました。遺伝子治療によって治療可能と思われる最初の有名な疾患です。この技術は

 20年来、ほとんど打破することができず失敗でした。「このことは、本分野での素晴ら

 しい進歩であると考えており、結局のところ、1990年初頭の全てはガラクタです。この

 分野が本当に再興します」。とウェイル コーネル医学大学の遺伝子治療医であるロナ

 ルドG・クリスタル博士は述べています。

  遺伝子治療は、実に稀少疾患では小さな成功が積み重ねてきましたが、ペンシルバニ

 ア大学の臨床試験で患者の死亡で大きく後退しました。別の遺伝子治療臨床治験は免疫

 不全を治療しましたが、一部の患者で癌が発生してしまったのです。遺伝子治療の一般

 的な概念は、どんな疾患でも欠如遺伝子を正常遺伝子に取り替えるもので、ずっと魅力

 的なものでした。しかし、実際にやってみるとヒト細胞に導入遺伝子をウイルスに組み

 込むことでずっと困難なままでした。

  遺伝子が効果を発揮するまえに免疫系があまりにも効率よくウイルスを死滅させてし

 まうのです。

 New England Journal of Medicineのオンラインの土曜日版で報告された血友病 B の成

 功は、様々なグループによって何年もの間、いくつもの小さな進歩を一つにまとめたも

 のです。ウイルスベクターは、第IX因子として知られている凝固因子のヒト遺伝子の正

 常化型を有しており、メンフィスにあるセントジュード小児研究病院の研究者によって

 調整されました。ボラインティア患者を募り、ロンドン大学アミットC・ナスワニ博士が

 率いる医療チームにより英国でウイルスの治療をおこない、フィラデルフィアの子供病

 院の研究者が免疫応答をモニターしました。

  血友病 Bは第IX遺伝子の欠如によって発症します。治療しない場合は致命的です。こ

 の疾患はほぼ男性のみに起こります。第IX遺伝子は、男性は一つだけ有しているX染色体

 上に存在しています。欠如している遺伝子のX染色体を保有している女性は、もう一方の

 正常なX染色体で補完することが可能です。しかし、欠如遺伝子のコピーを半分の子供に

 伝えます。

  約3万人に1人の新生男児がこの疾患を有しており、アメリカでは約3,000人の患者が

 います。

  ナスワニ博士と彼のチームはウイルスベクターを静注することによって患者を治療しま

 した。ウイルスは肝臓の細胞に生着し、第IX遺伝子を有しているベクターは、その後、

 正常第IX因子を産生しています。単回投与で患者は少量のIX因子を有することが可能で、

 6名のうちの4名は通常投与、供血由来で調整された第IX因子製剤投与を中止しました。

 残りの2名は製剤投与を必要としていますが、回数は減りました。

  製剤により患者を治療する費用は年間30万ドル(約2340万円)、生涯では2000万ドル

 (15.6億円)かかります。新たなウイルスベクター導入の単回の静注は、たったの3万

 ドル(234万円)です。

  セイントルイスにあるワシントン大学医学科のキャサリンP・ポンダ―博士は New

  England Journal of Medicine 誌の彼女のコメントで、この臨床試験を「画期的な研

 究」と称しています。

  患者は22カ月間、第IX因子を産生しつづけました。地質学者である1名の患者は、最

 初は良好の反応を示しました。しかし、彼の第IX因子濃度は、この疾患が現れる1%に

 低下しました。これは彼が炎症を有していたという事実が原因であるとロンドンの王立

 自由病院の血友病センターの主任のエドワードG.D.トッデナム博士は考えています。

 「すぐにでも始めなければなりません。患者は、免疫系がウイルスベクターを攻撃する

 ことを準備しているので再び同じウイルスを治療することはできません。20名超の患者

 はウイルスの至適用量を評価するために治療をうけるでしょう。高用量の目的は、免疫

 系の攻撃を誘発しないことです」。とトッデナム博士は述べています。

  彼(地質学者である血友病患者)は、そのことに関して大変達観しています。しかし、

 彼は科学者であり、彼の動機は科学を支援することです。「我々は最適の場所におり、

 全てがうまくいく場合、血友病の遺伝子治療は数年で幅広い適応で利用可能となる可能

 性があります」。とトッデナム博士は述べています。

  2006年の臨床治験で、第IX因子を産生する正常遺伝子を導入し患者は、わずか10週た

 らずでした。フィラデルフィアの高等病院のキャサリンA博士によるこの治療の設定は、

 免疫系が効率的にウイルスベクターを抑制するため、ステロイドを患者に使って、この

 新しい治療がうまくいきました。

 「このような研究者は私の競争相手ですけれども私は本当に興奮しています」。ハイ博

 士は、彼女の研究室が患者のモニターをおこない、ウイルスがヒト遺伝子から精子遺伝

 子に入らないようにとか遺伝子を変えないようにと調整の証拠を示しました。他の遺伝

 子疾患の深刻な問題は、遺伝子が無作為に染色体に挿入することです。ときには、遺伝

 子を壊すのです。ナスワニ博士チームが使用したウイルスは、アデノ随伴ウイルスー8

 として知られているもので通常、染色体の外にいます。ですから、このような問題を示

 すはずがありません。患者は、いまだマウスでわずかな可能性が示されているので肝癌

 をモニターする必要があります。

 「私はこの治療法が拍手喝さいをあびるようなものでとは考えていません。評価しなけ

 ればならない重要な安全性の問題があります」。とハイ博士は述べています。

  患者は、アカゲザルに感染する随伴ウイルスにほとんど免疫性がありません。肝細胞

 は本来の第IX因子を産生しないので、このウイルスは肝細胞を標的とする特性があり、

 治療には好ましいです。

 しかし、肝細胞は永続的に生きませんし、治療がどのくらい持続するか限られている可

 能性があり、ゆっくりと補充します。

  血友病症例の約 80%は血友病 Aと知られているタイプで、異なる凝固因子、第VIII

 因子が欠損していることにより引き起こされます。研究者は血友病Bの第IX因子遺伝子が

 第VIII遺伝子よりはるかに小さく、研究しやすいという理由が幾分あるため焦点をあて

 ています。

                                ( E.M )

 ※「New England Journal of Medicine」の本論文紹介欄の見出しに、血友病B患者へ

  クリスマスプレゼントと記してあります。血友病B患者の欠損凝固因子をクリスマス

  因子とも言いますので、それにもかけたビッグニュースとして紹介されたのでしょう。

   日本でも自治大学の坂田教授が「血友病の根治療法をめざして」遺伝子治療を研究

  しています。厚労省や患者がとても関心をもっている研究班で、血友病B患者へ本邦

  での臨床試験を間近にと期待されています。定年前後の患者からは、子供たちのため

  にと試験が始まったら真っ先に手を挙げたいと希望する人もいます。

 

 


 

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