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世界血友病連盟(WFH)国際会議2012報告 はばたきは4本のポスター発表やアジアミーティングに参加しました

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  • 2012.8. 1

 

世界血友病連盟(WFH)国際会議2012 報告

 

社会福祉法人はばたき福祉事業団
専門家相談員 久地井寿哉

世界血友病連盟(WFH)国際会議2012がフランス(パリ)にて2012年7月8日(日)~2012年7月12(木)にて開催されました。「Treatment for All」を合言葉に世界各国より5400人以上の参加者を集め、盛況のうちに幕を閉じました。

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(社福)はばたき福祉事業団からも、計4本のポスター発表
(社福)はばたき福祉事業団からも、計4本のポスター発表を行いました。(写真1-4)参加者からは、熱心な反応がありました。特に、一HIV薬害被害者の肝移植、悪性腫瘍など闘病している「マイ ライフ」を発表したポスターには多くの参加者が足を止め、一気に熟読するしたり熱心に内容に質問があったりとても注目を浴びました。その他、血友病薬害被害者の自立に向けた課題と支援の報告、血友病患者の教育の現状と課題や、血友病の遺伝に係わる家族問題などについて取り上げました。

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カナダ血友病協会のブースを訪問
国際会議では、各国の患者会組織や製薬企業のブースが出展し、ユニークな取り組みや、新商品のPRなどが熱心に行われていました。写真は、カナダ血友病協会のブースでの一コマです。血友病の遺伝に係わる支援の一環として、保因者に対する情報提供も行われているとのことでした。(写真5)

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薬害HIV事件についての展示、印刷物
HIV/HCV重複感染のセッションや、薬害被害の歴史なども取り上げられていました。会場で毎日配られる速報紙では、1983年の薬害HIV事件の歴史が紹介されていました。WFHでも血友病患者に生じた感染被害を決して風化させないことを表明していたのと、これからも、伝えていくためのCDなど作成配布などをしていくことが役員から伝えられました。(写真6)

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次回開催について
次回世界血友病連盟国際会議は2014年にオーストラリアのメルボルンで開催されることが決定しています。テーマは「Close the Gap」。世界の690万人いると推定されている出血性疾患の約75%が未診断または十分な治療を受けられていない現状に対して、100ヶ国以上の参加と具体的な取り組みを目指しています。


アジアミーティング
日本の東日本大震災の時の血液製剤についての対応について、壇上より質問がありました。そこで、具体例として、日本赤十字社が緊急車による日赤製剤以外も配送する戸別訪問の例など、具体的対応についてコメントしました。(写真7、写真8) また中国の患者さんとの交流実現に向けた話し合いも行われました。(写真9)

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注目したセッション
 ・HCV/HIV重複感染のセッション <詳細>
・血友病の家族問題~幼少期から学童期まで、のセッション<詳細>
・加齢、のセッション<詳細>
について、それぞれ詳細をレポートします。


HCV/HIV重複感染のセッション
会場で一番注目を集めたのは、HIV/HCV重複感染患者自身による発表でした。内容はライフヒストリーについて家族、友人、仕事についてのかかわりについてであり、出来事や整理された内容でした。「病気の進行によって、差別経験、インターフェロン治療によるうつなどに加え家族をもつことの諦めや、仕事などあきらめることになったが、自分の問題点を整理し、人とつながることはできる、と思い、今回の自身の経験についての発表につながった」という答えに、会場は大きな拍手で答えました。
その他の発表として、
制度的な面から、
・複数の医療者チームと患者をどのように結びつけるか

医療的な現状と課題として、
・健康増進と副作用を少なくするにはどうすればよいか

心理面として
・HIV、HCV、血友病のストレスをどう軽減するか
特に、心理的な悪循環が起きやすいという指摘がありました。


血友病の家族問題~幼少期から学童期まで、のセッション
診断や治療が患者や家族へ与える影響についてのセッションでした。注目は、当事者としての発表として、アイルランドHIV感染被害者母親の視点と支援いうタイトルの発表がありました。
血友病の診断のあと、悲嘆のプロセスとして次のような経験を語られました。
1.    ショックを受けた
2.    拒絶(間違いであってほしい)
3.    怒り
4.    交渉(教会などにいき、なにかとひきかえに助けを求める)
5.    うつ状態
6.    試練(現実的な解決策を探す)
7.    受容(前向きに進む道を探す)

また、支援受けた経験として
・家族
・友人
・かかりつけの血友病の病院
・血友病協会
・コミュニティ(地域)
・学校

血友病の診断をどう分かち合うかについて
・子育て
・その子が子育てをするときに、おばあちゃんとしての経験につながる
と考え、オープンに前向きに、意思決定と診断を共有することにしているとのことでした。

HIV被害の後、HIV治療を乗り越え20歳で子供の手が離れたことで、今後の血友病コミュニティへ貢献することと、自分自身にも仕事復帰や休日ができ、自分自身の人生を生きることが大きな克服の契機となったとのことでした。

感想ですが、支援理論的な視点からは「Shared Decision making (意思決定の共有)」「Shared Experience(経験の共有)」を実践している好事例だと思いました。


加齢(Aging)のセッション
加齢にまつわる身体的な課題、痛みの管理、性の問題、歯の健康、患者の視点といったテーマがとりあげられていました。ここでは医療側の視点からの身体的な課題と、患者の視点からみた課題について紹介します。

○身体的な課題について

一般的な加齢の影響
・視力 白内障の影響
・聴力
・筋力の低下と神経機能の低下: 身体機能や筋肉密度の低下、転倒の増加、バランス調整機能、固有受容(感覚)
・骨強度 強度の低下、骨折のリスクの増加
・免疫 さらに感染症が起こりやすくなる、免疫システムが病原体に効果的に反応しなくなる

高齢者に多い病気としては以下があり、65歳以上の約88%が一つ以上の慢性疾患を持っている
・循環器系疾患
・がん
・関節炎
・高血圧
・糖尿病
・骨粗しょう症
・腎臓病
・認知症
・高コレステロール
・肥満

さらに、血友病については
・静脈瘤
・関節症
・転倒
・肥満による関節炎の増加

心理社会的な影響として
・健康状態の悪化に従い、医療システムへの依存が増す
・移動能力の低下
・うつ状態
・喜びの喪失-一日の過ごし方や役割を変える必要があるかもしれない
・早期退職による経済的問題、地域サービスへのアクセスの問題
・家族関係の変化―例:配偶者が働きに出る必要、介護者としての役割が増える、など

まとめとして、
・血友病の高齢化の増加
・血友病と加齢については、血友病の特徴一般の加齢も考慮に入れる必要があること
・血友病センターの役割として、合併の予防・緩和に、多機能協働・連携(multidisciplinary approach)が必要であること
・血友病センターのスタッフは、他の専門家の意見を聞きながら、調和のある治療のために、統合的な役割を果たす必要があること
・包括的医療は、医療のマネジメントと、QOLの改善に貢献してきた

○患者の視点から見た課題
実際に血友病高齢者からの視点から見た課題について発表がありました。
・インヒビター:
・慢性的な痛み:1960年代の血友病患者に戻される。深刻な障害が発生する
・肝臓疾患:大幅にQOLが低下する
・腎臓疾患:輸血や血漿の輸注により起こる
・整形外科手術:治療費が高い

患者の視点による指摘
・これらの問題に患者は気が付いているが、一般人と同様、これらの問題を考えることはない。日常生活の問題に隠れてしまう
・特定の疾患に対して、血友病センターは、医療調整について対応できる能力と可能性がある
・血友病患者は、出血、痛み、限界、それらのマネンジメントについて慣れている。(にもかかわらず、多くの血友病患者は自分を病人・出血疾患者と思い、病気の側面しか見ない)
・よりよい血友病患者になるためには、より生き方に着目するほうがよいだろう。(血友病患者の望ましい生き方として、限界を知り、それらに慣れていくことが最も良い方法ではないだろうか。)
・他の慢性疾患患者と同様、血友病患者も病気をコントロールしたいのである。(我々のほとんどが、病気のコントロールの一環として家庭療法や自己注射を行うのである)
・我々は病気の自己管理の方法を知っているが、一般的にはその自己管理の方法が他の人を恐れさせてしまうことがよくある。

ではコントロールされていない状況とはどんなものだろうか
・事故が起きた時に血友病患者は生き残れるだろうか?(ケータイに入力されている医療機関の番号をコメディカルのスタッフはちゃんと見るだろうか?)
・医療スタッフは、私を血友病患者として治療してくれるだろうか?
・警察官が私の腕を見たときに、麻薬中毒者と間違えたりしないだろうか?(同じ恐れを糖尿病患者も持っているらしい)。それよりも何よりも、ちゃんと主治医に連絡してくれるだろうか。
地方の救急に運ばれた後で、長い時間、このような恐ろしい時間を過ごすかもしれない。

取り組み
情報共有をスウェーデンやノルウェーの患者会として行った。
・高齢の血友病患者
・家族
・医療システムの中で
・社会的な権威や、組織と

血友病高齢者のニーズについてチェックリストの作成
・それを基に、地域の第一人者や地域医療関係者の対話を行った
・そのチェックリストは血友病センターで年次ごとにファシリテーションや対話の内容を踏まえて改訂・管理している
・報告書を作成し、地域の血友病医療機関や、地域の第一人者に対し送付している。

経験のない血友病高齢者世代
・一般の人たちは加齢について、祖父や近所の人たち、マスコミが提供する高齢者のビジュアルなどからシンプルにイメージを得ることができる
・血友病の高齢患者には、そのような経験や、将来像に対する明確なイメージがない。

こうしたことが、特に身内に不安を起こさせる

研究について
・医療面での研究は多い
・高齢を受け止める血友病患者にとっての、不確定さからくる不安や恐れについて、心理社会的な側面での研究がもっと必要
・ツール・方法・高齢化に対する助言は、一般的な患者だけでなく、血友病患者にとっての役立つものになっているだろうか。

結論
・研究はパートナーの状況や包括的なQOLをカバーしており、かつ同様な問題で苦しむ他の慢性疾患グループなどと比較できるものだろうか?
・パートナーが血友病や合併症についての知識が少ないことを我々は多く事例を知っている。
・年に一回、パートナーを含め、血友病センターで日常生活の管理と支援のツールを提供することは良いアイデアかもしれない。

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