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[ HIV/HCV重複感染、HIV感染MSM患者に急性HCV感染者が増加、日本だけでなく世界も同様な広がり ]

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  • 2014.9.30

論文紹介

ACC(国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)の石金医師が筆頭著者とする論文が「Plos One」で発表されました。今回は、この論文をご紹介したいと思います。

HIV感染MSM(男性間性交渉者)患者間で急性HCV感染者が増加していること。IL-28Bのゲノタイプを調べていること。急性C型肝炎の治療法にペグ・インターフェロンおよびリバビリンの併用療法によりウイルス学的著功が高く有効であること。治療の有効性を高めるために早期診断が求められているという内容です。(M.E)

ACCでの急性C型肝炎症例の増加

HCVinMSM.jpg























HIV感染MSM患者間でのHCV感染が増加していることに関しての報告は、増加する傾向にあります。異性間性交渉では、HCV伝播は限りなく低いという報告がされています。

Hepatology. 2013 Mar;57(3):881-9. doi: 10.1002/hep.26164. Epub 2013 Feb 7.

参考文献:Sexual transmission of hepatitis C virus among monogamous heterosexual couples: the HCV partners study.

タイトル:一夫一妻異性間の性交渉者でのC型肝炎の性交渉による伝播:HCVパートーナ研究

以下の参考文献はMSM患者間で急性HCV感染者が増加しているという報告です。
Clin Infect Dis. 2014 Sep 3. pii: ciu695. [Epub ahead of print]

Hepatitis C Virus (HCV) Antibody Dynamics following Acute HCV Infection and Reinfection among HIV-Infected Men who have Sex with Men.
タイトル:男性と性交渉するHIV感染者間で急性感染と再感染後、抗HCV抗体ダイナミックス

Epidemiol Infect. 2014 Aug 29:1-9. [Epub ahead of print]
HIV and viral hepatitis co-infection in New York City, 2000-2010: prevalence and case characteristics.
ニューヨーク市におけるHIVとウイルス性肝炎の重複感染:2000-2010:有病性と症例特徴

本論文のタイトル、出典、および著者

論文:Acute Hepatitis C in HIV-1 Infected Japanese Cohort: Single Center Retrospective Cohort Study.

論文タイトル:日本人HIV感染者コホートにおける急性C型肝炎:単一施設後ろ向きコホート研究

出典:PLoS One. 2014 Jun 19;9(6):e100517. doi: 10.1371/journal.pone.0100517. eCollection 2014.

著者:Ishikane M¹, Watanabe K², Tsukada K³, Nozaki Y⁴, Yanase M, Igari T⁵, Masaki N⁶, Kikuchi Y³, Oka S², Gatanaga H².

要旨 目的:HIV感染者では、HCV重複感染は予後不良である。
とりわけ、アジア諸国においては、セロコンバージョンの新規患者数が増加しているが、臨床的特色はまだ明らかではない。

メモ:セロコンバージョン:免疫機構によって活動を抑えられた状態をセロコンバージョンと言います。感染者の多くはセロコンバージョンが続くので、肝炎を起こさない無症候性のままの状態です。

デザイン: 2001~2012まで診断された患者の単一後ろ向きコホート研究

方法:血清中の高いALT(100国際単位超)で急性肝炎(AHC)検出された後、抗HCV抗体で診断された。セロコンバージョン:臨床的特徴、HIV-1関連免疫状態とIL-28Bゲノタイプ(rs12979860, rs8099917)が収集した。

私たちは、HCVの自然除去の有無の患者間や、ペグ・インターフェロン(PEG-IFN)+リバビリンの治療に対しては応答する群、応答しない群の間の変異を比較した。

結果:研究期間中でAHCと診断された患者35例が診断された。患者の96.9%はMSM(男性間異性交渉者)であった。3例は経過観察中に死亡した。AHCの75%の患者(32例中24例)は無症候で、たまたま血清中のALTが高いため特定された。

ウイルス自然除去を示さなかった群と比較すると自然HCVウイルス除去していない患者では、徴候がみられ急性肝炎関連の深刻な異常を示していた。

ウイルス自然除去は、CC+TT遺伝子型を有する28例の4例で見られた。しかし、IL-28B CT+TGの遺伝子型をもつ患者6例では見られなかった。ペグ・インターフェロン+リバビリン治療では、自然除去せず、ペグ・インターフェロン+リバビリン治療が開始された。ウイルス学的著功割合は高かった。(81.8%)

結論:HIV-1感染MSM患者は、注意深く観察する必要がある。AHCの症例に対しては、早期の診断とペグ・インターフェロンとリバビリンを考慮すべきである。

C型肝炎(HCV)感染は、世界的な有病率は、2~3%である。HIV感染者におけるHCV重複感染罹患率は増加している。従来のメタ分析では、HCV重複感染している高活性の抗レトロウイルス療法のみの患者より1.35倍高かった。HIV/HCV重複感染患者では、肝硬変や原発性肝臓がんへ進行しやすい。さらに、慢性HCV感染HIV陽性者はペグ・インターフェロン(IFN)+リバビリン(RBV)に対して不良である。HCVのみ(ウイルス学的著功 54-61%)と比較すると(ウイルス学的著功:SVR 19-40%)であった。
異性間交渉によるHCV感染は、非常にまれである。しかし、近年、HCVセロコンバージョンが高い頻度で報告されている。こうした結果は、新規なHCV感染は、HIV-1感染患者の臨床管理において、今後問題となる。一方では、急性肝炎(AHC)のペグ・インターフェロンやリバビリンは、慢性肝炎(ウイルス学的著功率 85-98%)やHIV/HCV重複感染者(ウイルス学的著功60-80%)と比較すると応答が高い。しかし、HIV-1感染者のAHCのデータは、特にアジア諸国ではまだ限定的である。
ペグ・インターフェロン+リバビリンに対する応答は、インターフェロン28B(IL-28B)遺伝子型は、慢性HCV感染型やHIV感染者の症例においてはインターフェロンλ3をコードしている。さらに、有利な遺伝子型(CG rs12979860 TT rs8099917)をもつHCVのみの感染患者が、有利でない遺伝子型をもつ患者に比べると、自然除去を獲得しやすかった。自然治癒やアジア人HIV-1感染患者でAHCの治療応答に関して研究はされていない。当病院でAHCと診断されたHIV感染患者35例存在した。現在の後ろ向き的な研究では、こうした症例の32例の分析結果やペグ・インターフェロン+リバビリン治療応答と関連する応答結果について議論をおこなう。

デイスカッション
本研究では、本研究期間中AHC35例の特定をおこない、ほとんど全員が(35例中34例)MSMであった。もっとも高いHCV遺伝子型1bであった。(27例中19例)こうした報告は、他国からの報告と一致している。これに関して、HIV-1感染者MSMのHCVセロコンバージョンは、非常に頻度が高いことが2つの集団で報告されている。同様な研究で遺伝子1b型は、こうした患者間ではメジャーであったと報告されている。HCV感染は急性期では発見されないことが多く、症状が出現しないため慢性期のみ診断される。
同様なことがAHCに関して以前の報告がある。当病院での75%は無症候であり研究集団の6.3%がALTの穏やかな上昇であった。(100国際単位<ALT<150国際単位)
急性HCV感染期間中のALT上昇は、相対的に暫定的であり,
定期的な臨床チエックでは容易に見過ごしやすい。HIV-1感染MSM患者の抗HCV抗体でのスクリーニングは、議論の分かれるところである。

結論:AHCの可能性については、無症候であっても、穏やかなALT上昇を示しているHIV-1感染MSM者では特に注意をしなければならない。早期に抗HCV治療が開始されれば、有効な応答が期待できる。自然HCV除去、治療の適切な開始時期、治療期間の予測要因を決めるために詳細調査が求められている。

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