薬害エイズ和解記念集会
国際医療福祉大学 教授 田沼順子 様
第一に、薬害エイズ被害によりお亡くなりになられた皆様に、謹んで哀悼の意を表しますとともに、現在も療養を続けておられる皆様のご健康を、心よりお祈り申し上げます。
薬害HIV訴訟の和解から、すでに長い年月が経過いたしました。この間、HIV感染症をはじめとする関連疾患の治療は大きく進歩し、医療は確実に前進してきました。しかしながら、薬害エイズという出来事が医療、そして社会に投げかけた問いは、今なお私たちの前に厳然として存在しています。
私は2024年まで、国立国際医療研究センターにおいて、薬害エイズ被害者の救済医療に携わってまいりました。その現場では、医学的治療にとどまらず、医療への不信、説明への不十分さ、当事者や患者が声を上げにくい環境など、複雑で根深い課題に直面してきました。和解の際に約束された医療が十分に実現されているのか、そして医療への信頼は真に回復されているのかという問いを、私はしばしば抱かずにはいられませんでした。
これらの事実と教訓を次の世代に確実に伝えていくことは、私に課された重要な責務であると考えています。現在、私は将来医師となる学生たちに教育を行っていますが、授業においては、薬害エイズ被害者の方々をはじめ、他の薬害被害者やHIV陽性者の皆様の経験や言葉を手がかりに、医師や医療組織の態度、価値観、さらには沈黙そのものが、患者の人生にいかなる影響を及ぼしうるのかを、学生と共に考えています。
犠牲となられた尊い命を決して無駄にすることなく、同じ過ちを繰り返さないため、今後も次世代の医療者と共に、「医療への信頼とは何か」という問いに、真摯に向き合い続けてまいりたいと存じます。









