薬害エイズ和解記念集会
大阪赤十字病院 坂本晴子 様
薬害エイズ裁判和解から30年ということは、自分が医師になってまもなく27年がたつということになります。和解10周年、20周年、そして30周年と、毎回出席させていただいてきましたが、30年間のうちこの10年間は、最も医療が激変したと私は感じています。私はHIV感染症や血友病の専門医ではありませんが、それでも、HIV感染症については、2016年にU=U(Undetectable=Untransmittable)というメッセージが出されたこと、血友病については、半減期延長型製剤や抗体医薬が使用できるようになったことや遺伝子治療が海外では承認され日本でも治験が行われていることなどを、ネットで検索すれば知ることができます。そして、世界的に大きな出来事として、COVID-19のパンデミックと、その初期の混乱と差別、ワクチンや薬剤の1年以内の開発と普及がありました。
学生時代の支援活動の中で、私は製薬会社や厚労省の前で、「あなたたちは何のために、誰のために働いているのですか?」と声をあげていました。その自分の問いが、今自分自身に突きつけられているように感じます。30年前には、血友病患者さんのHIV感染に関する最新情報を現場の医師が集めるということは、ネットで検索できる今と比較するとずっと困難だったはずです。当時の最新の医療も、今の加速度的に進歩する医療技術と比較すると、ずっと限られていたはずです。逆に今は、あまりに多くの新しい医療情報や医療技術があり、それをアップデートしていこうとしながらも、私はその波に溺れてしまいそうになります。「何のために、誰のために」という基本を忘れず、当事者である患者さんたちの声を聞く中で動機づけされ励まされ、学ぶべきことの優先順位をつけ、うまく波に乗り目指す地点まで泳いで行く必要があると感じています。
現在私は小児科医として、新生児医療や小児神経疾患診療、児童虐待対応などを中心に行なっています。2012年に家族と共に参加させていただいた京都での血友病サマーキャンプでの保因者ワークショップをきっかけに、2019年に臨床遺伝専門医資格を取得し、病院の臨床遺伝部門にも所属しています。離れたり近づいたりしながら、皆さんとこれからも歩んでいきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
(薬害HIV訴訟を支える京都の会元代表)









