血友病情報
出血など緊急時の対応について
脳内出血や食道静脈瘤の破裂、交通事故などの緊急時に救急車の搬送先によっては、医師が血友病のことがわからなかったり、製剤のストックがなかったりして、適切な治療が受けられないことがあります。
救急隊は、患者が特定の病院に運ぶようお願いしても、まずは一番近い救急病院に運んでしまうことがあります。そこで、意識がある場合は、救急車を呼ぶとともにかかりつけ病院にも連絡し、救急隊に適切な病院に運ぶよう頼んでもらってください。可能であれば、念のため、手持ちの製剤を持っていくこともおすすめします。
また、緊急時に適切な対応をとってもらうよう、以下のような事前の準備も大切です。
1)主治医に、緊急時にどこに連絡すればよいかなど、対応について相談しておく
2 )自分の意識がなくても適切な救急対応がされるよう、家族や身近な人に対応方法を伝えておく
3 )財布の中などに血友病のことやかかりつけ病院の連絡先などを書いたカードを入れて持ち歩く
4 )かかりつけ病院が遠方の場合は、主治医に相談し、自宅近くで救急対応できる病院を見つけるため、年に数回、自宅近くの病院に通うなどしておく
突然の出血はいつ起こるかわかりませんので、きちんと準備しておきましょう。

ここで、実際に緊急時に救急車を利用した方のケースをご紹介します。この方は、交通事故にあい、通院医療機関に救急車で運ばれました。しかしその医療機関は県を越えなければいけないこと、何よりも血液製剤をすぐに投与しなければいけないことなど、いくつものハードルがありました。それをクリアできたのは、もしものためにしっかり事前に準備をしておいたおかげでした。
交通事故にあった!!!
ある日、家の近くのスーパーマーケットへ買い物に出かけた。荷物を自転車のカゴに入れ動かしていると店内で駐車をするためバックしている車にぶつかりバランスを崩し転倒してしまった。あまりの痛みに動けないでいるうちに救急車が呼ばれた。
“まずい、まずは血液製剤を打たないと”頭をよぎるが救急隊員は近隣の受け入れ医療機関に連絡を入れている。私は「〇〇病院へ運んでください」と通院医療機関の名前を告げた。しかし、その病院は越県するので救急隊員は耳を貸そうとしない。もう一度「その病院に行かないと・・・とにかく連絡をしてほしい」と医療カードを提示し連絡してもらった。
幸い、〇〇病院の主治医につながり「取り急ぎ近隣の病院で骨折しているかの確認を取る。もし骨折した場合は〇〇病院へ搬送してください。その後は自分が診ます」と確約を取った。
一方、緊急時のことを説明してある家族にも連絡を取ってもらい「〇〇病院へ、そうでなければ命が危ない」と強く伝えた。
ホッとしたのも束の間、そうだ血液製剤を自己注射しなければと思い「近隣の病院へ搬送される前に自宅に寄り自己注射をさせてほしい」と救急隊員にお願いすると自宅へ救急車を横付けしてくれた。
救急隊員に抱えられ玄関まで運んでもらうと冷蔵庫から血液製剤を取り出してもらい、いつも通り(ぬるま湯で腕を温める)の手順を踏むためお湯を沸かすなど準備をしてもらい自己注射をして病院へ搬送された。
近隣病院でCT検査を受けた結果『骨折』ということで〇〇病院へ搬送された。結局、事故から数時間が経過したが希望通りの常時の通院医療機関へ搬送されたことはよかったと思う。
医療機関から渡された緊急時の場合の患者カードは役立ったし、家族にも渡し説明しておいてよかったと思う。また、一刻も早く自己注射を打つことができたのは救急隊員の理解のお陰だと思う。言ってみたものの救急車が自宅に横付けし自己注射の準備(ぬるま湯の用意)までしてくれたことにはありがたいことだとつくづく思った。